くいどころバー玄太田店

群馬県太田市に2008年にオープンした居酒屋店の改装工事です。

店舗1階部分は別のデザイナーにより設計されオープンしたもので、掘りごたつ形式の板の間を主体としたほの暗い店内は、ほど良い落ち着きが感じられ、幅広い年齢層に支持を得ていましたが、接待等に利用可能な個室空間の希望も多く寄せられていたため、同店2階にあったカラオケ店を改装してプライベートな空間を確保した新たな客席を設けることになりました。

60坪ほどの空間に、6～10名のグループに対応した個室を７室設けています。オーナーからの要望は「既存店とはまったく違う雰囲気に」ということでしたので、1階既存店のイメージを損なうことなく、新たなイメージを付加するようなデザインを心がけています。1階の武家的な「真から行」の雰囲気に対して、より繊細な数奇屋的ともいえる「行から草」の空間作りを主体としています。

個室は各室ごとに異なるイメージを持たせ、個室へのアプローチやサービス導線を工夫し、通路部分には「道行き」としての空間性を作り出しています。飛び石を渡る、式台をあがる、戸をひく、、視線の移動とともに足裏の感触や光が変化して行きます。また、個室内からもそれらの「気配」が感じられるよう開放性を慎重にコントロールしています。個性ある個室群がそれぞれの世界をもちながら、互いに影響しあってひとつの街並みを形成するような、多様性のなかにも一体感のある空間づくりを目指しました。

また施工にあたっては、関係する人たちの「つくりたい気持ち」を誘い出すように心がけました。ゲンバに入ってからの変化も少なくないプロジェクトでしたが、多くの職人たちの気持ちがその手を通じて、図面に引かれた以上に豊かな空間をつくりあげてくれたと感じています。